住まいの前と住まいの奥

・apartment - competition

・Tokyo

・1,317㎡

・collaborate with Tomoko Kano

・2020

変わらない空間性・変わる空間性ー 「奥」は、日本独特の空間概念といわれています。麻布台地や高輪台地にも枝道があり、「到着する」あるいは「分けいる」道を作り上げています。住まいにも「奥」があり、それが狭い空間をも深化させています。「都市に住まうこと」がかつてない変貌を強いられているいま、変わらない空間性を発見して、変えうる空間性を提案する、それが「住まいの前と住まいの奥」の提案です。

奥で働くー 町家は、表の店(=働く場)と、奥の居住空間(=住戸)で成り立っていますが、私たちが提案する職住一体の集合住宅は、その順番を逆転させます。ICTを活用した新しい働く場は、都市からの距離に束縛されません。むしろオフィスが住戸から近すぎず、遠すぎない距離に位置し、好きな時に集中して働けることの方が大事だからです。

分け入る道ー 住戸とオフィスの分節は、生活モードから仕事モードへの段階的な移行(行動様式の変化、移動の刺激、視線のカットなど)を可能にする「道」がつなぎます。住人が道を歩くとき、繰り返す屈折により目の前の光景が生滅し、上り下りで歩行のリズムがわずかに狂うことで、仕事に向きあうための身体に変わります。

あふれ出しー その道には生活感がでています。共用の本棚(=ライブラリー)のほかに、物干し場、水場などのたまり場があり、料理好きの大家さんは道で朝食をふるまっています(=朝食の家)。住戸からのあふれ出しが、シェアとも異なる、住人同志のゆるい関わりを築くきっかけをつくります。

日常と非日常の活動が連続する防災ー 1階の井戸端室には、ランドリーを利用する人が洗濯物を待ち、近所で働く人が打ち合わせをしています。キッチンとレンタルルームをつなげて開かれる和食教室には、外国人観光客も参加しています。このような日常的な活動は、非常時の供食(炊き出し)にも役立ちます。かつての井戸のまわりに人や情報が集まったように、道や井戸端室が人と人、人とまちを結ぶ「ちぎり」のような役目を果たせれば、日常と非日常の活動が連続する防災力の高い集合住宅となるはずです。

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